うるさくもない朝

とても美しい花がときどき咲いては枯れる砂漠

十一月

 三日坊主にさえならず、「四月」を最後にブログを書かなくなったのは、何より私が私のことをよく分からなくなっていたからだ。何を語るかより前に、語る私が何者かを分からなければ、書き留められる言葉は現れないと思う。キャラクターの居ない小説みたいに、風景と、幽霊だけの映る映画みたいに。

 最近は少しだけ、私は前より私のことを分かるようになった。考える時間だけは多くあったからだと思う。それか、寒くなってお気に入りの、冬物の丈の長いコートを着れるようになったからかもしれない。コートを着てる冬のあいだ、私は私の像をそれ以外の季節より上手く認識できている気がする。袖の無い服を着てる間は型崩れしたゼリーのような気持ちでいた気がしてくる。

 

 何をするにも、私は青と白と黒色の組み合わせが昔から好きだ。お気に入りのコートは黒色だし下に着てるセーターは白。青いマフラーがあれば完成かもしれない。最近になって、私の生まれたこの街も、構成しているのはおよそその三色であると思い始めた。海と、冬にだけ降る雪と、それ以外を覆う夜の黒。あるいはその隙間に灰色だけが入り込んでいる。心が目で見た外の色を写しとってその色になっているのかもしれない。心は私以上にこの街を好いているのかもしれない。

 

 このように、思いつきを書いていって、気が済んだら締めます。重要なことは何も書かないし、重要なことなんてここにはおよそ何もありません。*1

 

 

 

 

 

 十一月は終わろうとしている。カレンダーがあまりに無機質なものだから、一か月が終わるということにいつも月の最後の一週間ぐらいで気が付く。

 最近は、暇なときは映画を見ているか、漫画を読んでるかアニメを見ている。それかゲームをしている。暇なときというのは、あまりない。結構ずっと何かをやってる。だから最近は土日は休むようにしている。暇なときがあまりないのは、あまり良くはないからだ。最近は、エアロバイクも買った。運動をする時間をアニメや映画を見る時間にあてて、インプット量を増やすためだ。youtubeで、桜井政博が良いと言っていたので買った。

 二日に一回ぐらいは漕ぎながらアニメを見ている。いい感じがする。運動というのはいい感じを得るためにするから妥当だと思う。運動をしながらアニメも見れている。アークナイツとうる星やつらガンダムを見ている。ぼっちざろっくとdo it yourselfだけは浴室で、落ち着いて見るようにしている。後者の二本は私にとって、私の関心ごとと結びつきかなり大切に思えるからだ。

 日常アニメを真剣に見るようになったのがいつからかあまり覚えていない。「FLCL」か「sirial experiments lain」を観てから何かが変わったような気がする。日常がとても曖昧で簡単に壊れてしまうこと、あるいは恐ろしいほどの強度を持っていること。日常という退屈が人の心を灰色に塗りこめてしまうこと、そこから離れたいと人の願う衝動。残酷や絶望さえも日常というひたすら続く回帰は、どうしようもなく押し流してしまうこと(……それが救いにも、より深い絶望にもなり得ること)。それらのことに、かなり前から関心が絶えない。

 閑話休題。エアロバイクどの程度効果があるのかはまだよく分かっていない。週のうち二~三日あったどうやっても頑張れない日が、一~二日程度に縮まったような気もする。そういう日が無くなると嬉しいなと思う。

 

 今日は次に描く作品のための資料を集めていた。かなり久々に図書館にいった。蔵書数はあまり無いけど漫画も置いてあるタイプの図書館なので、漫画を描いてる私としてはありがたかった。

 「作ってる最中に作品の話はしない」という縛りを大切にしているので、どんな漫画を読んだかは具体的には言えないが、抽象的には、男女の恋愛や友情に関する漫画を読んだ。私は恋愛について、少し考えを深めたが、それはまだここに書けるほど成熟した考えではないと思った。結局、今日読んだものについて書けることは何もないようだった。

 

葬送のフリーレン (1) (少年サンデーコミックス) | 山田 鐘人, アベ ツカサ |本 | 通販 | Amazon

定時で帰ってネコを吸う 1 (電撃コミックスNEXT) | ヒロイチ |本 | 通販 | Amazon

 

 私はバランスを取るように、最近読んで面白かった漫画のamazonリンクを投げやり気味に貼り付けた。フリーレンは万人にオススメの漫画で、ネコを吸うはやや変わった漫画が読みたい人にオススメだった。

 

 

 さっきまで夜の散歩に出ていた。帰り道に10m前方にいる猫を見つけた。私は近づいて行った。輪郭がはっきりするほどまで近づくと、猫は逃げていった。猫ではなく、犬かもしれないとわずかに疑いを持つサイズの影だった。

 私は猫がピャッと消えていった方の路地に入り、あたりを見回して探った。うろうろと歩いていると猫が駐車場のコンクリートの上に居るのが分かった。中空に、銀のビー玉のような目が光っていたからだ。猫の輪郭はやはり曖昧だった。瞬きするだけで、猫の存在はその場で明滅した。

 私は猫のいるはずの地点に近づいた。到達したとき、やはりと言うべきか、もうそこに猫はいなかった。真っ暗闇を見回しても猫はどこにもいなかった。影さえ残っていなかった。それが猫だったのかどうかさえ分からず、この出来事は終わった。

 

 

 今このとき、書きたいことがおよそ無くなった音がした。頭の中で、抽象としての音が鳴った。それはチャイムの音に似ていた。高校時代の夢を未だによく見てしまう。苦手だったクラスメイトと、好きだったクラスメイトはいつもほとんど一緒に出てくる。少し前、はじめて別れた恋人が夢の中に出てきた。マンションの窓から玄関前に立ってるのが見えた。「別れよう」と話をしてから、その日初めて出てきた。

 

 

*1:これは、口を滑らせていて、何かを言い過ぎているかもしれない